日本のフードカルチャーガイド

記事を依頼する

【後編】太宰治にストーブ列車。青森県・金木の「食」と「暮らし」に触れる

 

青森県五所川原市にある金木(かなぎ)は、文豪・太宰治が生まれ育った町。このあたりの地域は「奥津軽」と呼ばれ、昔ながらの食文化が今でも日常の一部として残っています。

そんな奥津軽の郷土料理をご紹介した【前編】に続き、【後編】では金木ならではのカルチャーを郷土料理とともに楽しむイベントに潜入。太宰治の生誕110周年イヤーを締めくくるトークセッションや、津軽平野を走り抜ける津軽鉄道の冬の風物詩「ストーブ列車」を貸し切ってのイベントが開催されていました。

郷土料理とともに「太宰」を楽しむイベント

私たちが取材に訪れたのは11月半ば。奥津軽の町はすでに冬支度を始めていました。

田園の向こうにうっすらと顔を覗かせる岩木山

 
晩秋の芦野公園駅を発つ津軽鉄道

 
家々の軒先の「寒干し大根」はこの季節の風物詩

その週末、奥津軽の食文化や歴史に触れられるイベントがあると聞き、おじゃましてみることに。16日(土)の夜は、太宰治の生家であり現在は記念館として一般開放されている『斜陽館』で、芥川賞作家・大岡玲さんを招いたトークセッション「太宰と酒と津軽衆」が開催されていました。

太宰治記念館『斜陽館』

 
『斜陽館』の米蔵で開催されたトークセッション

 
左から紀行作家・山内史子さん、作家・大岡玲さん、『斜陽館』館長・伊藤一弘さん

トークセッションのおともとして配られたのは、東京・銀座のバー『ロックフィッシュ』店主の間口一就さんがつくるハイボールと、このイベントのために用意された特製おつまみ。太宰本人・美知子夫人・友人らの著書をもとに太宰が好んだ津軽の食材を調理したもので、おつまみと言うには贅沢すぎる手の込んだ品々!

銀座バー店主の間口さんがつくる、氷のない極上ハイボール

 
太宰が好んだ郷土の食材を使った特製おつまみ

太宰が好きだった食材を使った「根曲がり竹の子の煮物」「ワラビ炒め」や「木綿豆腐の清水森ナンバ佃煮添え」、金木で昔から栽培されている「絹さやのソテー」、小説『斜陽』に出てくる丸の内ホテルのサンドウィッチをアレンジした「ハムカツサンド」などなど。太宰の作品や人生に思いを馳せる3人のトークセッションを聞きながらいただくと、より感慨深い味わいでした。

冬の風物詩「ストーブ列車」で津軽を満喫

翌日の17日(日)は、津軽鉄道を貸し切っての「ハイボール列車」イベント。通常運行の列車に、毎年12〜3月に運行される津軽の風物詩「ストーブ列車」を接続し、その中で景色を眺めながらハイボールと特製おつまみをいただくという賑やかなイベントです。

ストーブ列車とは、石炭のだるまストーブを車内に設置した津軽鉄道ならではの列車。1930年に運行が開始されました。


現在も冬季限定で走っている「ストーブ列車」

昔懐かしい切符は「ハイボール列車」特製
ストーブの上で焼くスルメは格別

前日のトークセッションでもハイボールを提供した銀座『ロックフィッシュ』の間口さんは、昨今のハイボールブームの火付け役とも言われているハイボールづくりの名手。ユニークなおつまみのレシピを紹介する著書も出版しています。

銀座バー『ロックフィッシュ』店主の間口一就さん

 
郷土の食材を使った間口さん監修の特製おつまみ

この日のおつまみは、津軽の食材をベースに間口さんがアレンジを加えたハイボールにぴったりのメニュー。風味豊かな「なす大葉味噌巻き」、津軽名物を洋風にアレンジした「すしこサンドウィッチ」、1年ものの薄い昆布を巻いた「若生(わかおい)おにぎり」、『ロックフィッシュ』名物の「スコッチエッグ」など、どれもめずらしくて美味でした。

「ハイボール列車」で出会った木村夏実さん

イベントに参加していた女性をキャッチ! よく行く立ち飲み屋さんの紹介で参加したという、五所川原在住の木村夏実さんです。ウィスキーが好きで、『ロックフィッシュ』にもいつか行ってみたいと思っていたのだとか。

「津軽の郷土料理は普段からよく食べます。朝ごはんに貝焼き味噌を食べたり、馬肉鍋や馬刺しも大好き。今日は県外から参加されている方も多いみたいで、地元のことをみなさんに知ってもらう機会をつくっていただけて嬉しく思います」

旧駅舎をリメイクしたカフェで「太宰ブレンド」を

津軽鉄道線・芦野公園駅は、県立自然公園の中にあるめずらしい駅。太宰治の小説『津軽』にも登場しており、旧駅舎は現在「赤い屋根の喫茶店 駅舎」として営業しています。

太宰が通っていたという弘前の珈琲店のオリジナルブレンドコーヒー「昭和の珈琲 太宰ブレンド」、金木の特産品である馬肉を使った「激馬かなぎカレー」、すりおろしたふじりんごを使った「スリスリりんごカレー」などをいただけるので、津軽鉄道に乗った際にはぜひ立ち寄ってみてください。

店名:赤い屋根の喫茶店 駅舎
住所:〒037-0202 青森県五所川原市金木芦野84-171
TEL:0173-52-3398
営業時間:10:00~17:00(L.O.16:30)
定休日:水曜
Webサイト:http://wandono-ekisya.com

↓リンク
【前編】太宰治が生まれ育った青森県・金木。文豪も愛した「奥津軽の味」とは?

Writer
三橋温子
Photographer
飯坂大
ページトップ